かの日のSimple Use Film Camera ファーストロール

かの日のSimple Use Film Camera ファーストロール

日の長さや空気、光の色の変化などから緩やかに春に向かっているのを感じます。

ラジオで風の強い日はドライヤーと同じような役割のため雪解けが加速する、と聞きました。

雪は降らないが晴れもしない薄曇りでパッとしない天気が続いていましたが、3日前を境にして日中の気温が5,6度まで上がり、尚且強風というのが今日まで続いています。夜中には今年初めての雨音が響き、改めて季節の移ろいの最中にいるのだな、と。

昨年11月から雪が積もりはじめてこの数ヶ月の間は一面雪景色の中で生活していたため、いくら好きといえど他の色も恋しくなります。そんな中この天気なので雪解けが目立つようになり、寂しくもありますが春がやってくる焦燥感で心がざわつき始めました。

少し見渡すと広い空、丘が広がるこの北海道では雪の下の植物はまだ色を持っていません。しかしこの感じに見覚えがあり思い出したのは4年前の家族との北海道旅行の思い出でした。



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趣味として初めてフィルムカメラで撮影したのは2018年5月、北海道に家族旅行で訪れたときだった。

私としたことが、フィルムカメラを始めたきっかけを全く覚えていない。でもトイカメラとしてのロモのクリエイティビティ溢れた写真に惹かれていたのでカメラ自体知識が皆無だったけどNikonあたりの中古フィルムカメラを検討することはなかった。とにかくロモグラフィーのカメラが良くて、半年くらいオンラインショップとにらめっこして、結局渋谷のカメラのキタムラでSimple Use Film Cameraを購入した。

北海道を移動中のバスで、そわそわしながら握りしめていたのを思い出す。カメラの作りは「写ルンです」のようにシンプルで、弄るところがないから意味もなくフィルムを巻き上げたりして、「ジッジーッ」とバスの中で独特な音を響かせた。

現像は3週間後くらいに持っていった。面倒くさいなと思いつつバイト前に写真屋さんへ立ち寄って現像をお願いした。

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北海道と言われ想像するのは一面緑色か白色の、とにかく奥まで続く広々とした自然です。

しかしGWの北海道は、冬が明けたばかりの夏に向けてこれから準備していきます!みたいな時期で、木に葉はついていないですしそこら中に生えている草は枯草色。

関東の5月は青々とした緑であふれる時期なので、北国ともなるとこうも違うものかと凹んだ記憶があります。

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はじめてのフィルムカメラで撮影し、lomohomeに投稿したこの写真はlikeが100を超えていて、ずっと人気順のトップにいる。あれから色々なカメラやレンズを買って使ったけれど、いい写真かどうかに機材なんて関係ないんじゃないかと思えてくる。

今私は北海道に住んでいる。

“北海道”とひとくくりにするには広すぎる面積だけど、聞いて脳裏に浮かぶのはこのメルヘンの丘の写真で、4年前に見た訪れた中で最も印象的だった場所。私はもう少し暖かくなったら海の近くのこの町とは離れて、平野とその奥に広がる雄々しい十勝岳連峰が見える町に住居を移す。

北海道は150を超える市町村があるが、私の興味のある領域の仕事ができる場所は結構限られている。縁がなかったら埼玉に戻るかな、と思うくらいに、他に住みたい町はなかったし探す気も起きなかった。

すごく惹かれた町だった。

意識はもちろん無かったけど、今回、自分の頭の片隅にあった景色に引き寄せられた選択をしたように思う。